2020年05月16日
キャリアについて考える意味 Vol.3
〜ウチ(取締役を務める会社)の社員の実際〜
■成長したい人が増えている?
会社では、管理事業推進部の担当取締役を務めさせていただいている。部署名に“事業推進”って付いているのは、単に管理するだけでなく事業推進の役割を担っていることを社内に示したいから(うまくやれているかどうかは別の話…(苦笑 )。
それはさておき、ウチのメンバーに限らず、学生も社員も「成長したい!」って言う人が本当に多い!!で、それを聴いたボクは「どうなったら成長したって言えるの…、30歳になった時にどうなっていたい?」なんて質問してしまうのだけど…。
ほとんどの人は、具体的なイメージを持たないまま、呪文の様に「成長!!成長!?」と唱えているだけの様に感じる。学生のみなさんは、意地悪な人事担当者にこんな質問をされた際にドギマギしない様に準備しておくといい。
■成長したいメンバーと育成したい上司
一方で、「メンバーを育成したい!」という管理職も多い。ボクも昔は、同じ様なことを言っていたかもしれないので、偉そうなことは言えないが、何十年か社会人をやっていて思うことは、「人を育成するなんて、おこがましいよな〜」ってこと。
社会人としての基本である“報・連・相”がキチッと出来たり、“営業のコツ”を教えたり等、業務が円滑に進むための指導するコトは出来るかもしれないけれど、それは単なる技術指導で、ボクのイメージする育成とは違う。
そんな中、先日、人事考課のヒアリングで入社5年目のメンバーから、「上司は、何でも知っていると思っていたけれど、杉山さんは知らないコトが多いですよね?!」というコメントをもらった。それを聴いてボクはなんか嬉しかった。どんな背景での話なのかをご存じないみなさんが、嬉しい理由を推察するのは難しいと思うけど、ボクは『1年後の彼がどうなっているのか?!』が、とっても楽しみだ。
■想い出したこと
昨今、七五三転職(※注)が社会問題だと言われているが、ボクは大学卒業して、3年しないうちに3つ(企業・公務員)の団体を経験した。転職の主な理由は「休みが少ない」「仕事にやりがいを感じられない」だ。
3つ目の会社は、創業から10年ほどのアルバイトタイムス(求人情報誌のDOMOを発行している)という会社で、社員数は10名程だった。入社の決め手は、当時珍しかった『完全週休2日制!』と『求人情報の会社だから、次に転職する際の情報も多そう?!』という超安易な理由だ。結果的に、この会社では、営業、企画、編集・制作、流通事業、人材関連事業etc…、様々な仕事を経験した。経験しなかったのは、今ウチでやっている管理部門のシゴトくらいだろう。
いろいろやらせてもらったけど、上司である創業社長(満井義政さん)から指導を受けた覚えがない。とはいえ、満井さんには“感謝”の気持ちしかない。技術指導をしてもらったことは一切ないが、多くの機会を与えてくれたことが、その後のボクの人生のとても大きな財産になったと感じている。
結果、アルバイトタイムスのグループには、JASDAQに上場する直前までの17年間お世話になった。そして、入社時に思っていた『次の条件のいい会社』を見つけることなく、自身で起業する道を選んだ。
■離職は悪いこと?
ウチは大学生の就活では、比較的人気のある企業だと思うけど、ご多分にもれず退職者は少なくない。『期待して入社してくれたメンバーが辞めてしまうこと』が寂しくないと言えば、嘘になるけど、辞めないことが良いことだとも思っていない。
あくまで私見だが、『メンバーには自分のために自分を磨き続けて欲しいし、プロの職業人としてどこででも戦える実力をつけて欲しい』と思っている。ボクたち経営の役割は、メンバーが“踊り甲斐を感じられるステージを用意すること”であり、“ウチのステージで踊り続けたいと思ってくれる様なステージを用意すること”だと思っている。
だから、新進気鋭のベンチャー企業に転職したり、地域課題解決のための会社を起こしたりするメンバーの退職は、「次のステージでの活躍への期待や興味」と「ステージが用意できない自身の力不足を嘆く気持ち」が入り交じる。会社としては、大きな損失だから…。
■成長の先にあるもの
授業でもお話したとおり、キャリアの語源は、ラテン語の「carrus(荷馬車)」。キャリアとは、車輪の通った轍を意味する。
学生のみなさんには、「自身の成長の先に何があるのか?将来どうなっていたいのか?」を想像して欲しい。重要なのは、『思った通りになること』ではなく、『“想像した未来”に向かって歩み始めること自体』なんだと思う。
先週、ウチの新卒採用面接(今年はWeb面接)で、学生さんから「若い頃、苦労した経験があったら教えてください」という質問があった。会社の取締役やっている人は苦労の先に取締役というポジションが与えられたと思ったのだろう。面接官であるもうひとりの取締役が「毎日が苦労の連続だよ!若い頃も苦労したコトはたくさんあるけど、今の方がもっと苦労している」と答えた。ボクにとって“もわが意を得たり”の回答だった。
“想像した未来”に向かって歩み続けたとしても、『思った通りになる可能性』は高くない。けれども、人生は想像していなかった自分になれるから面白いんじゃない?
※注)七五三転職:正社員で入社した会社を、中学卒業者で7割、高校卒業者で5割、大学卒業者で3割が3年以内に退職してしまう現象。
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【学生さんの感想:Thanks!!】
・何かを始める時に「成長したい」と言ってしまいがちだけど、何をもって成長したとするかの自分の中にはっきりした基準があるわけでもないし、様々な経験をした結果あとから振り返った時に成長したと言えるようになるのかなと思いました。
・“私は人を育成できないから”という発言が面白かった。長くキャリアを積んできて、それが出た結論なんだと深く感じました。確かにいい営業マンにさせることはたくさんの人が出来ると思いますが、そうでは無いんですよね。
・成長とは多少なりとも他人の影響はあるかもしれないが、一番は自分自身によることであることを気づかされた。
・夢を見つけ、そのために今の仕事をやめて一から、また新しいことを始めていく方がいると聴いて、かっこいいなと思いました。たとえお金が稼げない職業だとしても自分がやりたいことならばそれも良い、周りの目を気にして仕事を選ぶのではなく自分がやりたいと思えるようなことをできたらと考えるようになりました。
【学生さんからのQuestion & ボクのAnswer】
Q1.将来、フリーランスで働きたいと思っています。スキルを磨くための踏み台として会社に就職するのは良いことだと思いますか?
A1.“踏み台”というコトバには抵抗があるけど、「“就職=就社”ではない!?」って考えれば、“自分のために仕事に就く”コトは大いにアリだと思う。ただ、ボクはスキルUPを単なる技術や知識の向上と考えるのではなく、もう少し広義に捉えて欲しいとも思う。スキルは、『会社で果たすべき役割』をしっかり担ってこそ、身につくものだと思う。
Q2.なぜ、貴社では若いうちから上司をさせたりするのですか?
A2.う〜ん、これは「なぜ、上司は若くちゃダメなんですか?」って逆質問したくなっちゃう質問かも…。「任せれば、頑張って成果を出してくれそうだ?!」って思えれば、年齢に関わらず任せるのはむしろ必然だと思う。マネジメントの本読むだけじゃ、マネジメントが出来る様にはならないでしょ。
ということで、今日はここまで。
※Pic:アルバイトタイムの企画担当の頃、レーサーのスポンサーをしていた時のもの。上司からシゴトを教えてもらった記憶は無いが、機会を与えてもらえた。感謝の気持ちしかない。
注)このブログは、2020年4月22日(水)静岡県立大学 キャリア概論を聴講してくれた学生を対象に書いています。聴いていない方には解りにくい部分もあるかもしれないことをご承知おきください。
■成長したい人が増えている?
会社では、管理事業推進部の担当取締役を務めさせていただいている。部署名に“事業推進”って付いているのは、単に管理するだけでなく事業推進の役割を担っていることを社内に示したいから(うまくやれているかどうかは別の話…(苦笑 )。
それはさておき、ウチのメンバーに限らず、学生も社員も「成長したい!」って言う人が本当に多い!!で、それを聴いたボクは「どうなったら成長したって言えるの…、30歳になった時にどうなっていたい?」なんて質問してしまうのだけど…。
ほとんどの人は、具体的なイメージを持たないまま、呪文の様に「成長!!成長!?」と唱えているだけの様に感じる。学生のみなさんは、意地悪な人事担当者にこんな質問をされた際にドギマギしない様に準備しておくといい。
■成長したいメンバーと育成したい上司
一方で、「メンバーを育成したい!」という管理職も多い。ボクも昔は、同じ様なことを言っていたかもしれないので、偉そうなことは言えないが、何十年か社会人をやっていて思うことは、「人を育成するなんて、おこがましいよな〜」ってこと。
社会人としての基本である“報・連・相”がキチッと出来たり、“営業のコツ”を教えたり等、業務が円滑に進むための指導するコトは出来るかもしれないけれど、それは単なる技術指導で、ボクのイメージする育成とは違う。
そんな中、先日、人事考課のヒアリングで入社5年目のメンバーから、「上司は、何でも知っていると思っていたけれど、杉山さんは知らないコトが多いですよね?!」というコメントをもらった。それを聴いてボクはなんか嬉しかった。どんな背景での話なのかをご存じないみなさんが、嬉しい理由を推察するのは難しいと思うけど、ボクは『1年後の彼がどうなっているのか?!』が、とっても楽しみだ。
■想い出したこと
昨今、七五三転職(※注)が社会問題だと言われているが、ボクは大学卒業して、3年しないうちに3つ(企業・公務員)の団体を経験した。転職の主な理由は「休みが少ない」「仕事にやりがいを感じられない」だ。
3つ目の会社は、創業から10年ほどのアルバイトタイムス(求人情報誌のDOMOを発行している)という会社で、社員数は10名程だった。入社の決め手は、当時珍しかった『完全週休2日制!』と『求人情報の会社だから、次に転職する際の情報も多そう?!』という超安易な理由だ。結果的に、この会社では、営業、企画、編集・制作、流通事業、人材関連事業etc…、様々な仕事を経験した。経験しなかったのは、今ウチでやっている管理部門のシゴトくらいだろう。
いろいろやらせてもらったけど、上司である創業社長(満井義政さん)から指導を受けた覚えがない。とはいえ、満井さんには“感謝”の気持ちしかない。技術指導をしてもらったことは一切ないが、多くの機会を与えてくれたことが、その後のボクの人生のとても大きな財産になったと感じている。
結果、アルバイトタイムスのグループには、JASDAQに上場する直前までの17年間お世話になった。そして、入社時に思っていた『次の条件のいい会社』を見つけることなく、自身で起業する道を選んだ。
■離職は悪いこと?
ウチは大学生の就活では、比較的人気のある企業だと思うけど、ご多分にもれず退職者は少なくない。『期待して入社してくれたメンバーが辞めてしまうこと』が寂しくないと言えば、嘘になるけど、辞めないことが良いことだとも思っていない。
あくまで私見だが、『メンバーには自分のために自分を磨き続けて欲しいし、プロの職業人としてどこででも戦える実力をつけて欲しい』と思っている。ボクたち経営の役割は、メンバーが“踊り甲斐を感じられるステージを用意すること”であり、“ウチのステージで踊り続けたいと思ってくれる様なステージを用意すること”だと思っている。
だから、新進気鋭のベンチャー企業に転職したり、地域課題解決のための会社を起こしたりするメンバーの退職は、「次のステージでの活躍への期待や興味」と「ステージが用意できない自身の力不足を嘆く気持ち」が入り交じる。会社としては、大きな損失だから…。
■成長の先にあるもの
授業でもお話したとおり、キャリアの語源は、ラテン語の「carrus(荷馬車)」。キャリアとは、車輪の通った轍を意味する。
学生のみなさんには、「自身の成長の先に何があるのか?将来どうなっていたいのか?」を想像して欲しい。重要なのは、『思った通りになること』ではなく、『“想像した未来”に向かって歩み始めること自体』なんだと思う。
先週、ウチの新卒採用面接(今年はWeb面接)で、学生さんから「若い頃、苦労した経験があったら教えてください」という質問があった。会社の取締役やっている人は苦労の先に取締役というポジションが与えられたと思ったのだろう。面接官であるもうひとりの取締役が「毎日が苦労の連続だよ!若い頃も苦労したコトはたくさんあるけど、今の方がもっと苦労している」と答えた。ボクにとって“もわが意を得たり”の回答だった。
“想像した未来”に向かって歩み続けたとしても、『思った通りになる可能性』は高くない。けれども、人生は想像していなかった自分になれるから面白いんじゃない?
※注)七五三転職:正社員で入社した会社を、中学卒業者で7割、高校卒業者で5割、大学卒業者で3割が3年以内に退職してしまう現象。
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【学生さんの感想:Thanks!!】
・何かを始める時に「成長したい」と言ってしまいがちだけど、何をもって成長したとするかの自分の中にはっきりした基準があるわけでもないし、様々な経験をした結果あとから振り返った時に成長したと言えるようになるのかなと思いました。
・“私は人を育成できないから”という発言が面白かった。長くキャリアを積んできて、それが出た結論なんだと深く感じました。確かにいい営業マンにさせることはたくさんの人が出来ると思いますが、そうでは無いんですよね。
・成長とは多少なりとも他人の影響はあるかもしれないが、一番は自分自身によることであることを気づかされた。
・夢を見つけ、そのために今の仕事をやめて一から、また新しいことを始めていく方がいると聴いて、かっこいいなと思いました。たとえお金が稼げない職業だとしても自分がやりたいことならばそれも良い、周りの目を気にして仕事を選ぶのではなく自分がやりたいと思えるようなことをできたらと考えるようになりました。
【学生さんからのQuestion & ボクのAnswer】
Q1.将来、フリーランスで働きたいと思っています。スキルを磨くための踏み台として会社に就職するのは良いことだと思いますか?
A1.“踏み台”というコトバには抵抗があるけど、「“就職=就社”ではない!?」って考えれば、“自分のために仕事に就く”コトは大いにアリだと思う。ただ、ボクはスキルUPを単なる技術や知識の向上と考えるのではなく、もう少し広義に捉えて欲しいとも思う。スキルは、『会社で果たすべき役割』をしっかり担ってこそ、身につくものだと思う。
Q2.なぜ、貴社では若いうちから上司をさせたりするのですか?
A2.う〜ん、これは「なぜ、上司は若くちゃダメなんですか?」って逆質問したくなっちゃう質問かも…。「任せれば、頑張って成果を出してくれそうだ?!」って思えれば、年齢に関わらず任せるのはむしろ必然だと思う。マネジメントの本読むだけじゃ、マネジメントが出来る様にはならないでしょ。
ということで、今日はここまで。
※Pic:アルバイトタイムの企画担当の頃、レーサーのスポンサーをしていた時のもの。上司からシゴトを教えてもらった記憶は無いが、機会を与えてもらえた。感謝の気持ちしかない。
注)このブログは、2020年4月22日(水)静岡県立大学 キャリア概論を聴講してくれた学生を対象に書いています。聴いていない方には解りにくい部分もあるかもしれないことをご承知おきください。
キャリアについて考える意味 Vol.5
キャリアについて考える意味 Vol.4
キャリアについて考える意味 Vol.2
キャリアについて考える意味 Vol.1
キャリア開発論、終了!!
就職相談から見える学生のマインド
キャリアについて考える意味 Vol.4
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