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2012年05月28日

縁故採用はルール違反か

~行政、公平な方法求める~


大企業の新卒採用活動がヤマ場を迎えている。一般に採用は「公平な方法で行うべきだ」といわれるが、一方で知人や社員の「縁故」を頼った採用も少なからずある。縁故採用は法律上、問題があるのだろうか。

公平な採用活動を義務付けたルールは、実は少ない。法律で明確に定めているのは、採用時の性差別などを禁じた男女雇用機会均等法と、年齢を理由に採用で差別することを禁じた雇用対策法の2つだ。

労働基準法では、労働者の思想信条によって賃金などで差をつけることを禁じているが、これは雇用後の話。「縁故採用を禁止する法律はない」(厚生労働省就労支援室)のが実態だ。(中略)

採用では「応募者に広く門戸を開き」、本人の「適性・能力以外の点を採用の条件にしない」ことを求めている。厚労省就労支援室は「企業には社会的責任もあるので、就職活動をする人は基本的に広く応募してほしい」と話す。

ただ、実際にはある程度絞った形で採用活動をする場合も目立つ。例えば理系の大学院生は、教授の紹介で企業の研究職に就くことが多い。企業にとって、特定分野での技能を持った人材を集めやすいからだ。今年2月には岩波書店が「著者の紹介状あるいは社員の紹介」を採用選考の応募資格としたことが話題になった。岩波は著名出版社だが、採用は若干名。応募人数が多くなれば採用側の事務負担も見逃せなくなる。(後略)

出所:2012年5月28日 日本経済新聞 朝刊

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縁故採用の是非を、法務の観点から説明した記事。厚生労働省のコメントを要約すると、「縁故採用を禁止する法律はないけれど、企業には社会的責任もあるので、幅広く(公平に)公募してね!」といった結論になるようだ。

そんな中、法的な問題は別にして、私自身が考える『縁故採用』についてコメントしてみたい。

日本の学歴社会の中で育ってきた私は、かつて『縁故』という言葉に違和感があって、「情報は平等に提供されなくてはならない」と考えていた。『縁故』=『非正規ルート(裏口入学)』みたいなイメージがあり、「正々堂々と正面突破することが大切だ!」などと考えたということだ。

ところが、企業の採用担当としての活動や、再就職する方のカウンセリングをする中で、「『縁故』も悪くない。『縁故』、大いにありじゃない!?」という様に感じるようになり、最近では「転職を考えたら、まずは『縁故』を考えてみて…」と話すようにしている。何故かと言うと…

まず、採用担当の立場で言うと、「『縁故』での応募者は、人柄についての心配が少ないケースが多い」ということ。応募者がどの程度の職務スキルを有するかは別にして、紹介者だって、安心して紹介できる人でなければ紹介しない。また、かつてと違って、「『縁故』で紹介されたからお付き合いで採用する」などという企業は皆無だし、紹介者もそんなことは百も承知なので、採用基準に満たなければ、当然、採用には至らない。ということで、最近では、『縁故』での応募者には積極的に会うようにしているし、よい結果につながっている。

次に、カウンセラーの立場で言うと、「今やっている仕事が嫌で、後先考えずに辞めてしまう人が多いなぁ~」と思う。新卒ならばまだしも、社会経験のある大人(?)が職を辞すのだったら、会社に辞表を出す前(もしくは、ハローワークに行く前)に、友人・知人に就職の相談をしてみてもいいんじゃないかと思う。その際の相談は、「いいところがあったら紹介してくれないか」といった他力本願ではなく、「今までこんな経験を積んできた、経験を活かせるところの情報を持っていないか?」といった前向きな情報収集だ。「仕事をして報酬を得る」といった自律の精神なしに就職を成就することは難しいわけだし…。まぁ、こんな話をしても、多くの求職者は、「友達にだけは、求職相談なんてしたくない!」というのだけれど…。

前述したように、『縁故』に対する企業の考え方も変化してきている。「なんとか私を雇ってください」と懇願するような応募者とはお会いしたくないが、「貴社のために、こんな風にお役にたてるハズ!」という応募者だったら「是非とも会いたい!」という人事担当者は、少なくないと思うのだけど、どうだろう?

以上、私自身は、ハローワークや求人情報誌、求人サイトを使った就職活動だけじゃなく、自分自身のネットワークを駆使した求職活動を考え、実行するのが大切だと思っている。


公平性が重要であることを否定するつもりはないけれど、企業にとって採用の善し悪しが事業の盛衰に直結するわけで…。労働市場が需要と供給のバランスで成り立っている以上、何をもって「公平」と言えるのかを、今一度、考えてみる必要もあるんじゃないかと思う。

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Posted by オルベア at 14:13│Comments(0)新聞記事
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